『二千円札裏側の源氏物語の裏側』
二千円札の裏側が源氏物語の主人公光源氏(ひかるげんじ)とその息子の冷泉院(れいぜんいん)が対面している「鈴虫」の巻の場面に加え、作者である紫式部の肖像画という構図に決まりそうだという。もっとも「息子」といっても実は……。
冷泉院は元は帝(みかど。天皇のこと)。つまりその父もまた帝のはずであるが、源氏は帝ではない。そう……表向き、冷泉院は桐壺(きりつぼ)帝とその后である藤壺宮(ふじつぼのみや)との間に生まれた皇子である。しかし実の父は源氏なのである。その背景を解説すると……。
源氏自身も実は桐壺帝の第二皇子である。母は桐壺更衣(きりつぼのこうい)。だから本来は皇族であるわけだが、母の身分が低いことや周囲のねたみによりもたらされる将来のわざわいを考え、桐壺帝は源氏の姓を与え、あえて臣籍(臣下の身分)に下したのである。一方で母桐壺更衣は源氏が3歳の時に亡くなってしまう。
長く失意のうちにあった桐壺帝のもとに、亡き桐壺更衣とそっくりの藤壺宮が入内(じゅだい)する。この時藤壺宮14歳、源氏9歳。この藤壺宮を母とも姉とも慕っているうちに、源氏はいつしか藤壺宮に恋心を抱くようになるのである。
藤壺宮もまた源氏に心惹かれるのであるが、桐壺帝の后という立場上、それは許されるものではなく、意識的に源氏を遠ざける行動をとる。また源氏にとってみても、父の后である以上、藤壺宮への想いはかなわぬものであるとわかっている。にもかかわらず、藤壺宮が兄兵部卿(ひょうぶきょう)の宮の屋敷へ宿下がりした時に、この機会を逃しては……と源氏は地位も名誉も命もすべてすてる覚悟で藤壺宮のもとへ忍び込み、一夜をともに過ごすのである。そのときにできた因縁の子供こそ、冷泉院。時に源氏18歳、藤壺宮23歳である。
「鈴虫」の巻では、源氏50歳、冷泉院31歳。もちろん真実の関係は明らかになっていないが、互いに父子であることはすでに悟っている。中秋の名月に、冷泉院より月をめでる宴に招かれ会いにきた源氏との、二人の対面を描いたのがこの「鈴虫」の図である。
「男女の逢瀬(おうせ)の場面が多く、紙幣にはなじみにくい」との理由で最終的に選ばれたのがこの親子の対面シーンということであるが、この場面もまた、実は複雑な人間関係がその背後に隠されている。
この「鈴虫」の巻は、他にもさまざまな思惑が絡んでいる内容であるのだが、「知っているのは、月の光ばかり」と結ばれている、もののあはれがにじみでた巻である。
□参考
- 常用国語便覧
- 浜島書店
- あさきゆめみし
- 大和和紀(やまとわき)・講談社コミックスミミ(1〜13巻)
●ちょうど季節は秋ですね。秋といえば月のきれいな季節です。この時期にはいつもこの歌を思い浮かべるのです。
- 「木の間(このま)より もりくる月の 影みれば 心づくしの 秋は来(き)にけり」
- 木の間からもれれくる月の光を見ると、何かにつけて心を悩まし、物思いをする秋が来たことである(旺文社古語辞典より)
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