「SARS(サーズ:重症急性呼吸器症候群:Severe Acute Respiratory Syndrome)の正しい知識?普及」計画
SARSに関する報道や反応に問題あり?
台湾の医師が関西旅行から帰国後SARSを発症していたという問題。その後、医師が立ち寄ったホテルや飲食店、観光地などの名前が公表され、旅行や予約のキャンセルが相次ぐ騒ぎに。もちろん、予想されたこと。しかし、マスコミ報道の内容やそれに対する反応が「誇大」ではなかったか?
似ていると思ったのが、エイズの初期報道。当時は未知だったこの病気の存在が注目され始めた頃のマスコミの報道は、例えば次のようなもの。「感染すれば100%死亡する恐怖の病気である」「伝染病だから患者に近づいてはいけない」「同性愛者や麻薬常習者の病気である」など……。
こうした「誇大」な表現でエイズへの恐怖心や嫌悪感を煽った結果、正しい知識が普及する前にエイズ患者に対する「偏見」や「差別感」が広まった。そのため、エイズ患者が通常の治療が受けられなかったり、あるいは発覚を恐れて病院へ行かなかったりなどするうちに、意図せず他人に感染させてしまうなど、かえってエイズ拡大の危険性が高くなった……。
現在のSARSに関するマスコミ報道の内容やその反応は、このエイズの初期報道の状況と似ている。そして同様に、正しい知識が普及する前にSARS患者に対する「偏見」や「差別感」が広まる危険性も潜んでいる。
確かにSARSは未知の病気であり、治療法なども確立されていない。しかし、決して防げない病気ではない 。また死亡率が高いとはいえ、決して「感染すれば100%死亡する恐怖の病気」ではない(現に台湾の医師は死亡していない)。そしてまた、発症者が立ち寄った場所がずっと危険な汚染地帯というわけでもない。
SARSに関する正しい知識をもとう
むしろ一番怖いのはSARS自体ではない。つまり、SARSに対する恐怖心や嫌悪感が助長された結果、社会全体がSARSに対して偏見や差別あるいは憎悪を持ちすぎること。その圧力により、SARS感染者が自己申告を躊躇してかえって感染が広がること。そして、(感染の有無にかかわらず)その周辺地域の人達あるいは感染者の訪問先(店舗など)にまで偏見や差別感、風評被害が発生すること。病気に対する「無知」そして「偏見」「差別」から起こるそうした社会的混乱状態のほうがよほど恐ろしいといえる。
しかし、どうもマスコミの報道はエイズの初期と同じく、SARSへの恐怖心や嫌悪感を煽る内容が先行していると感じられる。もちろん予防策なども報じられてはいる。しかし、SARS発症者が実際に見つかった後の「SARS感染の危険がないと判断できる条件」要するに「SARS安全基準」みたいな情報があまりないのでは? 例えば「SARS発症者が立ち寄った場所はいつまで危険なのか(何日経てば安全なのか?)」「消毒シーンがテレビで映っているが、中国からの輸入品など、物を介してSARSに感染する危険はないのか?」等々。
そこでここでは、SARSに対する正しい知識および安全基準について個人的に調べた結果をまとめてた。但し、私は医者でも医療関係者でもない(汗)……よって、ここにある情報の運用・判断はすべて自己責任ということで。
最後に。「SARSはそんなに怖い病気じゃない」といってるわけではありません。SARSはWHOで「最も危険な感染症」に指定された(2003/05/28)、決して警戒を怠ってはいけない病気です。その点は誤解のないように。但し警戒しすぎるあまり、SARS患者やその周辺・立ち寄り先に対する差別や偏見はあってはならない。そのためにも正しい知識をもとうというのがこのページの趣旨なのです。
なにはともあれ、SARSに対する疑問あるいは偏見や誤解が解ければ幸いということで。
※【2003/05/29追記】世界保健機関(WHO)総会(ジュネーブで開催)は、2003年05月28日までに、新型肺炎「重症急性呼吸器症候群」(SARS)について、国際保健規則で定める「最も危険な感染症」に指定する方針を決めた、とのこと。
履歴
- 2003/06/04:3版:追記。
- 2003/05/29:2版:追記ほか一部修正。
- 2003/05/26:初版
感染経路
感染原因はサーズウイルスだと突き止めらたが、感染ルートは十分には解明できていないのが現状……。現在考えられているのは以下の通り:
患者(発症者)の咳やくしゃみなどを浴びる「飛沫(ひまつ)感染」が有力。飛沫感染の場合、感染源の「約1メートル以内」に近づかなければ感染しないとされている(インフルエンザやはしかより、感染力は弱いといえる)。
但し、接触感染(分泌物、排出物などに含まれるウイルスが付着した手で、目、鼻、口等を触ることによる感染)など、その他の感染経路も否定されていない。
感染者であっても、未発症なら他人には感染しないらしい。「感染を広げるのは発症患者だけ。しかも、患者と濃密な接触をしない限り感染しない」(2003/05/15WHOの見解)
物を介しての感染もどうやら低いといえる。仮にウイルスが物に付いた場合でも、長くても約2日(48時間)経てばウイルスはなくなるらしい。でなければ、感染地域からの輸入品などから日本にウイルスが入り込み、すでに発症者がでているはず。
その意味では、先に述べた台湾の医師の立ち寄り先について、消毒する必要はないはずだが……。テレビなどで消毒シーンを見て、「輸入品(食物や衣服など)から感染しないのか?あるいは消毒したほうがいいのか?」という問い合わせが多かったらしい。
いずれにしろ、発症者が見つかったあるいは立ち寄った場所だからといって、ずっと避ける必要はないはず(風評被害のほうがよほど怖い?)。
※【2003/06/04追記】24度の室内では、糞便(ふんべん)やたんの中で約5日、尿中で10日間、血液中では15日間生存するらしい。このほか、紙、木、土壌、金属、プラスチックやガラスなどの表面では3日間生存。 また高温には弱いらしい。37度の環境では4日間生存。しかし、56度に加熱すると90分、75度では30分で死滅。また、北京の晴れた5月の陽気のもとでは、ウイルスは紫外線によって3時間で死滅する(中国政府SARS対策本部の研究チームの調査)。
潜伏期間
2〜10日の範囲で、通常2〜7日間と考えられている。
サーズ流行地域から帰国後、10日が過ぎても症状がなければ、まず心配ないといえる。
いずれにしろ、サーズ流行地域から帰国した後は、10日間の自宅待機とその後の健康診断の受診が望ましいとされている。
SARSの確認3項目
- 38度以上の急な発熱
- せきや息苦しさなどの呼吸器症状
- 伝播確認地域への渡航歴(渡航歴のある人への接触者も含む)。但し、潜伏期間(2〜7日、体の変化に注意が必要とされている期間は10日間とされている)を考慮すること。
致死率(死亡率)
WHOによる推計(200305/07のWHOレポート)によると、以下の通り。
全年齢 | 14〜15% |
---|---|
24歳以下 | 1%未満 |
25〜44歳 | 6% |
45〜64歳 | 15% |
65歳以上 | 50%以上 |
これを見る限り、老若男女問わず15%の致死率というわけではなく、実際のところ、65歳以上の死亡率が突出している点が注目される。
WHOによる検討結果では、SARSの致死率は年齢や基礎疾患などによって、また感染経路や暴露したウイルスの量などによっても異なるとしている。
これまでにSARSの可能性があると判断された人のうち、10〜20%は呼吸不全などで重症化。重症化は、糖尿病、心臓病など別の病気を普段から持っている人に多く見られ、致死率が高まる。
一方で80〜90%の人は、発症後6〜7日で軽快している(症状が出ても8〜9割の人は特別に治療を受けなくても1週間ほどで快復)という。あるいは(一般的な方法であっても)早期に治療を開始した場合、その後の経過が良い。また、感染に気づかないまま治る人もいると見られている。
実のところ、SARS感染を確実に判定できる診断法・検査法がないのが現状。よって診断法・検査法が確定・普及すれば、SARS患者と診断される人数が減る、あるいは逆に軽症のSARSの人も見つかる=患者数が増える可能性も。よって、致死率の数値は今後変動する可能性もあるとされている。
予防策
SARSの伝染を最大限に遮断するためには、SARS感染が疑われる患者、または発症可能性のある人との接触を避け、個人の衛生管理を徹底するのが一番の方法といえる。
- 緊急の用事がない限りSARSの流行地域に行かない。
- 手洗い、うがいの徹底。帰宅すれば流水で十分に手を洗う。
- 外出先で何か物を触った手で、自分の鼻や口に触れることを避ける。あるいは習慣的に手で鼻や顔などを触る行動があれば改める。
- 十分な睡眠、バランスよい食事を心がけて、体力を良好な状態に保つ。
- マスクの着用。ただし感染予防というより、感染者がつばなどを飛び散らせるのを防ぐという「感染拡大予防」の意味が大きいか?自己の感染予防なら実際は「外科用マスク(N95マスク)」などの着用が必要(ただしキメが細かい=呼吸がしずらいため、日常生活上では実用的ではないらしい)。
- アルコール消毒。家庭や職場、集合住宅などの共用部分をアルコールや漂白剤で消毒する。ふきん、お手ふきなどは使い捨てに。但し、仮にウイルスが物に付いた場合でも、長くても約2日(48時間)経てばウイルスはなくなるらしい。詳しくは「感染経路」の項を参照。
- サーズ流行地域から帰国した場合などは、他人への感染を予防するという意味で人との接触を最低限に控えること。具体的には、潜伏期間とされる10日間は自宅待機などする。(『北京から帰国の与党3幹事長、マスクで公務復帰』(朝日新聞)は、この意味では悪例か? ある中学校が『与党幹事長のマスク見てSARS不安 国会内見学を中止』というのも仕方ない?)
関連サイト・ページ
このページを作成するにあたっては、以下のWebサイトやWebページを参考にしました。
- 新型肺炎(SARS) (ヤフートピックス)
- http://dailynews.yahoo.co.jp/fc/world/mysterious_flu/
- 重症急性呼吸器症候群(SARS)に関するQ&A (国立感染症研究所 感染症情報センター)
- http://idsc.nih.go.jp/others/urgent/update-QA01.html
- 医療機関における感染防御のガイドライン(第1版:東京都感染症対策課)
- http://www.kenkou.metro.tokyo.jp/soumu/news/iryo-guide.html
- 重症急性呼吸器症候群(SARS:Severe Acute Respiratory Syndrome)
- http://www.tokyo-eiken.go.jp/IDSC/SARS/sars-topics.html
- SARS予防、基本が大事 手洗い・うがい・睡眠しっかりと
- http://www.asahi.com/special/sars/TKY200304250318.html
- 【SARS可能性患者】SARS予防法は?
- http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2003/04/29/20030429000036.html
- 一般的なSARSに関するQ&A(厚生労働省)
- http://www.mhlw.go.jp/topics/2003/03/tp0318-1d1.html
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