5.[最後の手段]泳いで救助に向かう場合

とにかく浮くものを! 道具なしには飛び込まない!!

最初に述べたとおり、泳がないで救助することができれば、それがいちばん良い方法です。けれども、水に飛び込まなければ救助ができない状況も当然あり得ます。

そこで、あくまで「最後の手段」と判断して泳いで救助に向かう場合には、最低どのような点について注意しておくべきか? 以下の点について理解しておくことで、救助者のリスクを減らせるかもしれません。

1)必ず救命用具を持っていく。

まずは救助者自身の安全確保が、確実で効果的な救助活動の基本。救命用具を一切もたずに飛び込むのは危険です。「浮くものを見つける」のページで紹介されているような救命用具(になるもの)を必ず確保してから、救助に向かいましょう。

これは救助者自身が溺れないようにする目的だけでなく、遭難者の安全確保のために使用する目的もあります。

2)衣服は脱ぐ。

衣服を着たまま水中に入った場合、その衣服の重さのため、泳ぐことは困難です。また途中で脱ごうとしても、水中では相当の体力が必要でまず不可能。よって、救助に飛び込むなら、衣服は脱いでおく必要があります。

ちなみに「着衣泳」という言葉がありますが、これはあくまで「着衣状態で水に浮き、呼吸を確保する方法」であって、泳ぐ方法ではないので、誤解しないように。

逆に遭難者の場合は、衣服は着たままのほうが良いとされています。着衣状態のほうが浮きやすく、体温の低下も遅くなり、体力が温存できるからです。

ただし、泳ごうとはしてはいけません。ただ、あおむけに浮かんで呼吸を確保し、じっと救助を待つことが肝心です。

※これについては「自分自身が水難事故にあった(水に落ちた)場合の対処法」を参照のこと。

3)救助活動は距離を保ったまま行なう。

遭難者のところまでたどり着いても、すぐに近寄ることは危険です。

多くの場合、遭難者はパニック状態にあります。そのため、救助活動に協力できないばかりか、救助者に非常に強い力でしがみついたりして、救助をかえって難しいものにします。最悪の場合、抱きつかれて救助者も一緒に溺れてしまうケースもあるのです。

そこでまずやることは、十分な浮力体を与えて遭難者を落ち着かせること。用意した救命用具をつかませて、落ち着くように声をかけます。そうして遭難者が落ち着きを取り戻したら、安全な場所に誘導する。それが理想的な救助法です。

「溺れている人の背後から近づけ」は本当か?

ちなみに、「溺れてもがいている人に近づく時は、必ず背後から」といわれています。しかし実際には、溺れている人は必死で救助者のほうに向こうとします。つまり、背後に回り込むというようなことは、訓練を受けた専門家でないと無理

しかし素人の救助者の場合、なんとか背後に回りこもうと溺れている人の周囲を泳ぎ回るうちに体力を消耗させます。そして焦りもあって、結局は正面で相手を確保しようとします。その結果、やはり抱きつかれてしまい、救助者も一緒に溺れるという最悪の結果(二重事故)を招くことになるそうです。

「飛び込まない」という勇気も時には必要

泳いで救助に向かう場合の手順は以上のとおりです。しかし、水中での救助には、見た目以上・予想以上の危険が伴います。

たしかに、危険を顧みず飛び込んで救助しようという気持ちは尊く、また勇気ある行動です。しかし、もしも自分の命が不幸にも失われてしまった場合、後に残された人たちがどうなるのか? 飛び込もうとする前に今一度考えること(それだけの心のゆとり・冷静さ)が必要です。

過去の水難事故のニュースを見ると、遭難者は救助された一方、救助者が亡くなっているケースは多いのです。遭難者は溺れた後、ボートに乗った人たちに救助されたり、あるいは自力で陸にあがったりして、助かっていることがよくあります。逆に、道具ももたずに飛び込んだ救助者自身は力尽き、溺れ死んでしまったという、最悪の結果を迎えてしまっている例が多くあります(注:あくまで個人的な印象です。統計データを元にしたものではありませんので、念のため)。

「冷静に判断して、自分自身に救助する力はあるのか?」あるいは「自分自身に万一のことが起きた場合、残された家族はどうなるのか?」などを考え、「あえて、飛び込まない」と判断する勇気も必要ではないでしょうか?

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